レッスン生の女子高生がこんな話をしたことがある。
『先生、音大に行った先輩から聞いたんだけど、大きな音を出すときは大声上げて弾くと大きな音がでるんだって~それを、教えてくれた先生は外国に留学に行って習ってきた先生なんだって』
『ほう~、なるほど』
わたしは思わず面白いなと思った。
理にかなった話である。
今や脳科学や心理学では体と心が繋がっているという理論はよく耳にする話である。
例えば悲しいときに鏡を見て『にっこり』、顔だけでも笑ってみると不思議とその時は悲しみが消えるのである。
また、演劇の舞台で本当に悲しい事がなくとも悲しい顔で演技をしているうちに涙を流している俳優を見ることはよくある事である。
つまり体で示したことは心に反応するのである。
そしてその逆も有りである。
心から感じたこと(感情)は体に反応するのである。
それは、理論的な言葉としての『大きい音』という感覚よりも遥かにしのぐものがあるといってよいであろう。
サッカーなどのスポーツ観戦で起こる悲鳴にも似たあの歓声は
決して『ここでは大きな声を出さなくてはならないので大声で応援しよう』などとは誰も考えてはいないであろう。
そこには大きな感情<勝ってほしい、負けてほしくない、この選手に頑張ってほしい等の感情>が存在し瞬間的に『大声』を出しているのである。
最初の話に戻ると、
『大きな声』を出すことによって、
『心、(感情)』が刺激されそれが
『体、(筋肉)』に反応して
大きな音が出せるというメカニズムが成り立っているといえる。
音楽には ƒ(フォルテ)強くという意味の記号があるが、
楽曲の中に出てくるどの ƒ(フォルテ)もその楽曲にふさわしい感情を持っているといえる。
レッスンをしているとレッスン生からこのような『色々なボール』が飛んでくる。とても嬉しいことである。
でもよく考えてみると、私のレッスンでは ƒ(フォルテ)の時『大声』を出して歌っているのはむしろ私である。
それで生徒たちの『心(感情)』が刺激されて『大きな音』が出ているのである。
これが今の現実である。
『どうりで、疲れると思った』・・・・(笑)