2023年8月9日水曜日

『絆』

レッスン中にいきなり小学校高学年男子生徒が

『せんせえ~、<ほじゅう>って漢字でどう書くかわかる?』
と聞いてきたのである。

『そうやね~、<ほじゅう>はこうかな』

わたしは紙に『補充』と書いて見せたのである。

『せんせえ~、良く知ってるね』
『そりゃ~、先生だって勉強してるからこれくらい書けるよ!』
わたしは見栄をはって少し得意げに言った。

その生徒はにっこりわらって

『じゃあ~、せんせえ~、<いるか>って書ける?』

『・・・・・・』

『僕、書けるよ。<いるか>はこう書くんだ、海の豚て書くんだ』と言って
得意げに『海豚』と書いてみせた。

『すごいね・・・、良く知ってるね・・・・』

『じゃあ、せんせえ~<ひとで>ってどう書くか知ってる?』

徐々に彼の立場が私より上になってゆく(笑)

しまったハメられたか?・・・・、

その生徒は好奇心旺盛でインターネットで漢字を探すのが趣味だったんだ、
忘れてた・・・・

一見、レッスン中にピアノレッスンとは関係のない無駄と思える会話。

でもこんな時その生徒の本質が見えてくるのである。
音楽だけではない好きなことに没頭する彼の個性は私の魂を揺さぶるのである。

私はどの生徒ともレッスンに無駄を入れることが多い。
(仕事をさぼっているわけではありませんのでご理解を・・・)

そしてその無駄の中で相手が見えてくるのである。

そして、『絆』が出来るのである。

また、それ『絆』は私のレッスンへのエネルギーとなるのである。
まさに『ピアノレッスン』は理屈だけでは割り切れないものを多く含んでいるといえる。








2021年6月11日金曜日

大声を出しながら弾く?

レッスン生の女子高生がこんな話をしたことがある。

『先生、音大に行った先輩から聞いたんだけど、大きな音を出すときは大声上げて弾くと大きな音がでるんだって~それを、教えてくれた先生は外国に留学に行って習ってきた先生なんだって』
『ほう~、なるほど』

わたしは思わず面白いなと思った。

理にかなった話である。

今や脳科学や心理学では体と心が繋がっているという理論はよく耳にする話である。

例えば悲しいときに鏡を見て『にっこり』、顔だけでも笑ってみると不思議とその時は悲しみが消えるのである。

また、演劇の舞台で本当に悲しい事がなくとも悲しい顔で演技をしているうちに涙を流している俳優を見ることはよくある事である。

 つまり体で示したことは心に反応するのである。

そしてその逆も有りである。

 心から感じたこと(感情)は体に反応するのである。

それは、理論的な言葉としての『大きい音』という感覚よりも遥かにしのぐものがあるといってよいであろう。

サッカーなどのスポーツ観戦で起こる悲鳴にも似たあの歓声は
決して『ここでは大きな声を出さなくてはならないので大声で応援しよう』などとは誰も考えてはいないであろう。

そこには大きな感情<勝ってほしい、負けてほしくない、この選手に頑張ってほしい等の感情>が存在し瞬間的に『大声』を出しているのである。

最初の話に戻ると、

『大きな声』を出すことによって、
『心、(感情)』が刺激されそれが
『体、(筋肉)』に反応して
大きな音が出せるというメカニズムが成り立っているといえる。

音楽には ƒ(フォルテ)強くという意味の記号があるが、
楽曲の中に出てくるどの ƒ(フォルテ)もその楽曲にふさわしい感情を持っているといえる。

レッスンをしているとレッスン生からこのような『色々なボール』が飛んでくる。とても嬉しいことである。

でもよく考えてみると、私のレッスンでは ƒ(フォルテ)の時『大声』を出して歌っているのはむしろ私である。
それで生徒たちの『心(感情)』が刺激されて『大きな音』が出ているのである。
これが今の現実である。

  『どうりで、疲れると思った』・・・・(笑) 



















2016年10月24日月曜日

実験ニコニコ・イヤイヤシート結果報告

ニコニコ・イヤイヤシート結果報告です。

  <実験ニコニコ・イヤイヤシート(2016.7.27)参照>

ピアノ発表会が終わってから2ヶ月の予定で実験的にはじめたニコニコ・イヤイヤシート結果を集計しました。


シートを渡した生徒 小学生15

 金ぴか賞(40点~56点、週5日以上程度)・・・9

 金賞(30点~39点、週4日以上程度)・・・3

 銀賞(20点~29点、週3日以上程度)・・・1
 
 全く記録せず・・・・・・・・1

 渡したもののほとんどレッスンに来ていない生徒・・・1

 
記録ができなかった2名を除いて13名の

  総合点は545

  平均41.9

  平均が『金ぴか賞』です。・・・うそだ~~!!(笑)


という結果が出ました。



全体の感想としては練習をよくするようになりました。
全く弾かずにレッスンに来るということがなくなったといってよいです。
そして、ほとんどのレッスンで前の週のレッスンより確実に弾けているので家庭での練習の意識は随分高まったのではないかと思います。


しかし、毎日記録することは正確的に負担の少ない生徒とおっくうな生徒はいるとは思うのですが、ややまとめて思い出して書いたのではないか?(やはり毎日はむつかしいのかな・・・笑)と思うふしもなくはない子も多々いました。



全く記録せずの生徒もニコニコ・イヤイヤシートのことは気にはしていましたので、結果としては練習量は確実に増えました。

また銀賞の生徒さんも練習量は確実に増えて以前よりずっと意欲的です。



つまり、練習の質や正直に書いたかどうかの問題です。



私も子供の頃、夏休みのお天気調べなど苦労して書いた記憶があります。
実は私も毎日記録するのは苦手な人間の一人なので子供達にこんな実験をするのは心苦しかったのですが、やっぱりやってみるものですね。


新たな展開になってきたような気がします。


そして結果として変わってきたことがあります。

  
①練習が出来ているのでレッスン時間に集中できるようになった。

       ピアノは時間で勝負の情報量の多い楽器の王様です。練習
   をしていないと指が動かなかっ たり、弾く場所や音楽そのも
   の(音符が読み込めていない)が理解できていないと脳に負
    担をかけます。そういう意味でも当然といえます。

 ②無駄なおしゃべりの時間が少なくなった。

     おしゃべり好きのお子さんにありがちなことですが、疲れてく
   るとすぐしゃべる(笑)
   なんてことが多々あるのですが、そのしゃべる衝動を100
   拒否は出来ないので、レッスン時間をどのように配分するか
   は悩みの種でした。
   かなりの解決になっています。
   やはり自宅練習は大切ですね。


 ③生徒さんが上記のような理由でレッスン時間を楽しめるよう
     に なった。そして家庭学習の意識が高まった。


 ④当然私自身の負担も減った。



こんな感じなので、まだしばらく続けてみたいと思います。

アンケート用の小さな鉛筆をごほうびとしてつけて・・・
<実は記録したいと思っても鉛筆がなかったという意見が多数ありました。>



ご協力くださった生徒さん、またご家族の皆様、




  『ありがとうございました!!!』




最後に子供達の自由な発想のニコニコ・イヤイヤマークです。


















2016年8月5日金曜日

ニコニコ・イヤイヤシート1週間目

ニコニコ・イヤイヤシート、小学生がすべて1週目を終わりました。

結果は・・・・?



すこぶる良好です!!!

こんなに出足が良くていいの!!!  夢みたい!!!

ほとんどの生徒さんが週五日以上の練習をしてきました。

そしてレッスンの時バッチリ弾けるんです。

それに、予想に反してなんとニコニコマークの多いこと、多いこと・・・・もちろん正直にイヤイヤマークも少しですがついています。

   『練習、嫌じゃなかったの?』

   『うん、楽しかった!!!』

   『え~? ほんとに!!!』

そして、子供たちの創造力たくましい色々なオリジナリティーに富んだニコニコマーク、イヤイヤマークが並びます。


何ということでしょう!!!

こんなに苦労した家庭学習が、こんな形でできるなんて・・・・


それに練習が出来ていると、レッスンの楽しいこと、楽しいこと!!!

楽しいのは私だけではなく、もちろん子供達もです。

 

  『先生、ごほうびでる?』

  『う~ん・・・ほうび出したいけど、みんなにごほうびあげたら先生破産しちゃう・・・
   あっ、でも賞状だそうか!!!』


と、子供にねだられ一瞬、苦肉の策が・・・


賞状だす事にしま~す!!!




まだまだ始まったばかりです。この後に何が起こるのかはわかりませんが、この実験のコンセプトは

  『続ける力』です。

たとえ途中で挫折しても

  『起き上がる力』です。

そして続けると、自分の身に起こる変化を

  『気づく力』です。 



ピアノを弾くということで、『生きる力』を育てたい、私は長い間ツール(道具)にこだわってきました。
そしてたくさんの教材を作ってきました。



しかし『心に向き合う』ことが、どれだけ大切か、わかっていたはずの事を、

  
   今、子供達から教わっています・・・




2016年7月30日土曜日

『ごほうび』が続けることの邪魔をする?

この豊かな日本で、親が子供に『~が出来たら~を買ってあげるよ』なんて約束をすることが良くあるとおもいます。

しかし『ごほうび』を約束しても、結局は成し遂げられない・・・なんてこともあるのではないでしょうか?

もちろん『ごほうび』の与え方によっては、とても良い結果を生むことはあるとは思うのですが、私の経験では『ごほうび』がかえって物事を続けることの邪魔をすることがあります。

たとえば今、夏休みですので宿題を例にあげると、毎年夏休みの終わりの宿題騒動にうんざりしている親にとって、

『何日までに宿題を終えると~のごほうびあげるよ』

なんて約束をすると、最初は子供は毎日の計画を立て、2、3日は頑張りますが、夏休みなどというものは予期せぬ遊びの誘いや家族でのイベントもあったりします。
また夜更かしなどにより朝ぼーっとしていたり、親の見ぬ間にゲームに興じたりということもあるかもしれません。
結局何日か出来ない日ができてくると、はじめにあれだけ『ごほうび』によってテンションが高かった気持ちが『あ~・・もう無理だ』と思うことにより気力がなえてしまい、続かなくなってしまいます。

そして結局はその年の夏休みも宿題は最後ぎりぎりまでかかってしまう・・・なんてことになってしまいます。

ただでさえ続けていること(続けようとしていること)が途中で中断すると再び始めるのはエネルギーがいるのに、『もう、ごほうびはもらえない・・・』という気持ちが更に追い討ちをかけます。

わたしは今の豊かな時代の子供達に期限付きの『ごほうび』は難易度が高いと考えています。
もちろん、性格はかなり影響するとは思いますが・・・


では、どうすれば良いのでしょうか?


期限をゆとりのあるものにする。
着かず離れずで勉強を見守る。(しかしこれは忙しい親には無理なことも・・・)
ご自分のお子さんをみて、無理だと思えば『ごほうびなし』するのもひとつの手です。



わたしは今回<ニコニコ・イヤイヤ>8週間シートを作るにあたり、生徒さんたちと『続けることは
難しい?』ということについて話し合いました。

その結果として、小学校4年生以上のお子さんであれば、何らかの形で

    『物事を続けることが難しい』

と認識していました。そして

    『続けられるようになったら良い』

とも考えていました。

子供達は確実に成長しています。そして成長することを素直に望んでいます。

一度、親子で『続けること』について話し合ってみるのも良いかもしれません。


2016年7月27日水曜日

実験<ニコニコ・イヤイヤ>シート


<ニコニコ・イヤイヤ>8週間シート


発表会も終わりほっと一息、でも休んでばかりもいられません。次なるアイデアがふっと頭をもたげてきました。それが次に示す家庭練習シートです。





来年(らいねん)発表会(はっぴょうかい)までにはもしかしたら達人(たつじん)!!?)
うまくなりたい人の<ニコニコ、イヤイヤ>シート    名前      
曲目                             SPSソルフェージュ
                         はやわざパーフェクト 和音学習          































































ニコニコとイヤイヤの合計点
4056
金ぴか賞
3039
金賞
2029
 銀賞
1419
銅賞
713
プラスチック賞
6点以下
かんがえま笑
 



<ニコニコ・イヤイヤ>シートについて 
                 
<ニコニコ・イヤイヤ>シートの使い方。
・ピアノ練習を1回でもしたら、ニコニコマークかイヤイヤマークをシートに、自分で書き込みます。よい気分を持ってルンルンで練習できたときはニコニコマーク、気分が乗らないけどちょっと我慢で練習したときは1回弾いてもイヤイヤマークを、練習の量は関係なくピアノに向かい、1回でも弾くことが出来れば書き込むことができます。

・練習できなかった日は空欄にしておきます。

・たくさん練習して自分でも覚えておきたいと思う場合や、先生にほめてもらいたい場合はマークのそばにメモしてもOKです。(例えば10回とか、弾いた曲名とか、何分練習とか、書ききれないときは自分で別の紙を用意してください。)しかし、これに関してはしてもしなくてもよいです。

・ウソを書いても面白くはありません。

8週間したらニコニコマークとイヤイヤマークを合わせてすべて数え点数とします。そして賞を決めます。

<ニコニコ・イヤイヤ>シートの特徴
<ニコニコ・イヤイヤ>シートは、ただたくさん練習することだけを目的にはしていません。むしろ続けるということに重きをおいています。しかし毎日続けることは大人でもたやすいことではありません。誰かが毎日付きっきりで管理をすれば見た目はうまくいきますが、過度になった場合、絶対ではありませんが、音楽嫌いになる場合や心に傷を負う場合も少なくはありません。(もちろん親もくたくたかも・・・)
しかし自主的にできるかというとそれもなかなかです。 では続けるということはどういう事でしょうか?少なくとも続ける為には自分の『練習がいやな気分』に立ち向かわなくてはいけません。自分が『いやな気分』だと言うことを認めたうえで練習しなければならないのです。

つまり『がまん』です。

どんな『好きな事』を目指しても、必ず『いやな課題やいやな気分』は存在し、それを避けては物事を成就させたり成功させることはできません。
気分良く練習できるときは、ピアノの前には自動的に座れます。大切なのは(続けることが出来る方法は)『いやな気分』とどう向き合うかです。
そしてもう1つ挫折したとき(何日か続けて練習できなかったとき)そんなとき人は自暴自棄になって深い自己嫌悪に陥り結局はやめてしまうことも多々あります。しかし大切なことはもう一度起き上がる力です。深い落ち込みをすることなく自分を許し、再度挑戦するマインドです。
人が挫折することは不思議なことではありません。誰でもあることです。人は皆弱さをもっています。しかし不思議なことに挫折しながらでも再び起き上がり続けていく人は、人から見ればまるで『不屈の意思の強い人』として目に映ります。


したがってこの<ニコニコ・イヤイヤ>シートのイヤイヤマークは『がまんする力』として大評価し、空欄においても大きな価値があると考えて頂きたいと思います。


もちろん、このシートは毎日続けたいことであれば何にでも使えます。

まだまだアイデアの段階です。8週間後どんな結果が生まれるか?楽しみです。